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Webディレクター/デザイナーtakasyiのシネマアーカイブ。単純に観た映画を覚えとく手段のひとつになるメモ書き程度のテキスト。休みの前の日に、夜中遅くまで映画観るのとかたまらんですよね。

LOOPER / ルーパー

LOOPER

4

2012年 / アメリカ
監督:ライアン・ジョンソン
脚本:ライアン・ジョンソン
出演:ジョセフ・ゴードン=レヴィット / ブルース・ウィリス / エミリー・ブラント / ポール・ダノ / ノア・セガン / パイパー・ペラーボ / ジェフ・ダニエルズ / トレイシー・トムズ / フランク・ブレナン

まずはやっぱり「未来の自分を現在の自分が撃ち殺す」という近未来SF&タイムトラベルの世界観でもありそうでなかった“アイデア”が素晴らしい。構想は10年みたいだけど、長いことかけてるだけありますね。脚本がとてもしっかりしている。

現在の自分(ヤング・ジョー)と未来の自分(オールド・ジョー)が対面するという現象は、この手のテーマのタイムパラドックスにおけるタブーの代表格だけど、いままでのそんな“常識”なんてお構いなしにヤング・ジョーはオールド・ジョーを殺すべく撃ちまくってます。
この30年後の未来からやってきたオールド・ジョーの目的をヤング・ジョーが阻止するという展開の中で、斬新で先が読めないシーンや映像が次から次へと入ってくる。

オールドとヤング、どちらのジョーにも明確な目的がある。いずれも個人的で自己中心的な目的で話は進行するんだけど、そのために手段を選ばないオールド・ジョーの非人道的な行いは痛々しく、敵のアジトで「ブッ殺すぞー!クソ野郎どもー!」とマシンガンをブッ放すシーンでは、頭がおかしくなったジョン・マクレーンがいきなり現れたのか!?とさえ思うほどで、終盤にかけて“未来のジョー”というよりは、“子供を狙う邪悪なモンスター”のような立ち居振る舞いだった。

一方で、他人とあまり関わりあいを持とうとせず未来の自分のことでさえ「関係ない」と他人のように扱い、LOOPERとしての任務を全うしようと奮闘するヤング・ジョーだったが、サラとシドに出会ってからラストまでの展開や心境の変化などを深く考えると、さらに物語に入り込める。

ジョゼフ・ゴードン=レヴィットとブルース・ウィリスの2人の俳優が、ダイナーでステーキとスクランブルエッグを注文して見つめ合い、話をするシーンはストーリーの上で重要なのはもちろんのこと、映画史に残る食事の名シーンともなったと思う。カッコ良すぎる。

ジョゼフは特殊メイクでブルース・ウィリスの顔に似せつつ、話し方や癖を徹底的に研究したとのことで、その点だけ見ててもすごく興味深い映画なんじゃないかと思います。

RUBBER

RUBBER

4

2010年 / フランス
監督:カンタン・デュピュー
脚本:カンタン・デュピュー
出演:スティーヴン・スピネラ / ロキサーヌ・メスキダ / ジャック・プロトニック / ウィングス・ハウザー

タイヤが殺人鬼となって人々に襲いかかる異色のバイオレンス・ホラー・コメディ。いろんな表情持ってて面白いですこのタイヤくん。美女のシャワータイムを覗くなんてこのどスケベが!“観客の皆さん”や“俳優の皆さん”がいるのも楽しめる要素のひとつですね。「理由などない」んです。

TIME/タイム / IN TIME

IN TIME

2

2011年 / アメリカ
監督:アンドリュー・ニコル
脚本:アンドリュー・ニコル
出演:ジャスティン・ティンバーレイク / アマンダ・セイフライド / アレックス・ペティファー / キリアン・マーフィ / ヴィンセント・カーシーザー / マット・ボマー / オリヴィア・ワイルド

遺伝子操作によって老化を防ぐことに成功した人類は25歳で成長がストップ。みんな見た目は25歳。左腕に刻まれた時間(死へのカウントダウン)でその後の人生をまっとうしなきゃならない。

んんん...?何やらちょっと惹かれる舞台設定で、TVスポットやトレーラーを見る限りだとサスペンス要素もたっぷりあるかと思いきや、フタを開けてみると“時間=通過”のシステム自体もふわっとしててツッコミどころ満載、本来であれば出会うはずもない貧困層のにいちゃんと富裕層のねえちゃんが「時間はもともとみんなから奪ったものなんだから返してもらうよ!」ってなもんで、現代で言う銀行強盗をしてる話でした。うーむ。

遺伝子操作うんぬんの近未来って設定では似てる大好きな映画『ガタカ』のアンドリュー・ニコルが監督・脚本ということで、それなりの期待もしてただけに残念。キリアン・マーフィが時間監視局員で孤軍奮闘するんだけど、一番時間にうるさくないといけないアンタがあんな最期ってあんまりじゃないか...!?コーヒー1杯4分。副業でやるという“バトル”の地味さったらない。

UNTER KONTROLLE / アンダー コントロール

UNTER KONTROLLE

4

2011年 / ドイツ
監督:フォルカー・ザッテル
脚本:フォルカー・ザッテル

『アンダーコントロール』はすでに原発全廃を決めたドイツの関連施設や携わる人々の日常を、3年の歳月をかけて撮影したドキュメンタリー映画である。監督の“事実を直視する”という意図がダイレクトに届く内容で、これが地球上のものとは思えないくらいの無機質な施設内部や精密機器の数々に、時にうっとり見とれてしまうことすらあった。その世界からふと帰ってきて、これは原発なんだという事実を思い起こされた時の感情の起伏は大きい。

原発推進でもない。原発反対でもない。あくまでもフラットな立場で制作したんだなと感じられるけど、最新技術を持ってしても巨大なエネルギーを管理していく困難さ、一度動き出した原発を廃炉にする困難さ、地下600mに貯蔵されている放射性廃棄物の姿、無人の施設に不気味に鳴り響くサイレンなどなど、圧倒的な映像力で語りかけてくる。

一番印象的だったのは、カルカー高速増殖原型炉が1991年に計画中止となって、今ではワンダーランド・カルカーという名で遊園地として利用されていて、子供たちが冷却塔の中にある空中ブランコで遊んでるシーン。これは何を物語っているのか。どう理解すればいいのか。

とにかく、映画館を出たあとには、たくさんの人の目に触れるべき作品で、自ら足を運びお金を払ってでも見るべき映画なんだと強く思いました。

GOMORRA / ゴモラ

GOMORRA

4

2008年 / イタリア
監督:マッテオ・ガローネ
脚本:マルリツィオ・ブラウッチ / ウーゴ・キーティ / ジャンニ・ディ・グレゴリオ / マッテオ・ガローネ / マッシモ・ガウディオソ / ロベルト・サヴィアーノ
出演:トニ・セルヴィッロ / ジャンフェリーチェ・インパラート / マリア・ナツィオナーレ / サルヴァトーレ・カンタルーポ / ジージョ・モッラ / サルヴァトーレ・アブルツェーゼ / マルコ・マコール / チーロ・ペトローネ / カルミネ・パテルノステル / シモーネ・サケッティーノ

「GOMORRA(ゴモラ)」とは、旧約聖書のエピソードで神の怒りに触れて焼かれた商業都市の名前だ。

日焼けサロンでくつろいでる強面の大男たちが次々に殺される。まさに“焼かれた”という表現がピッタリ当てはまりそうな惨殺シーンから映画は始まる。闇と日焼けマシーンの青白い照明のコントラストも印象的で、タイトルにふさわしいオープニングと言えようか、と思うと同時に、これからただ事じゃない何かを見せつけられるという一種の絶望感もグッと立ちこめる。

ナポリを拠点とするイタリア最古かつ最大の都市型暴力・犯罪組織集団“カモッラ”。そのカモッラと関わっている人々の日常や生活を、冷酷なまでにただただ淡々と描くドキュメンタリータッチな群像劇。監督自らも偶然見かけたかのように撮りたかったと話す意図が突き刺さる。紛れもなく“現場”にいるかのような恐ろしさに包まれた2時間15分となった。

そういう形態があるのみで、誰を責めるわけでもなく、誰が悪いわけでもない。観る側として感情移入出来そうなのは“カモッラ”から抜け出したいと行動する人々になりそうだけど、特別にそこにウエイトを置いてるわけでもなく、言ったら平等に表現されている。

“個”などはいっさい存在しなく、とてつもなく巨大で形のはっきりしない裏の“組織”であり“産業”であり“社会”であり“現代”を、まざまざと見せつけられて何を想えばいいのか。知ることに意義があるのか。

演出としてはノンフィクションにすごく寄っていて、“真実に限りなく近いもの”こそ怖くて伝わるものも多い。回り回って自分の身近なところにまですでに忍び寄ってると感じざるを得ない。重量感たっぷりの映画でした。