cinema | roughtab

Webディレクター/デザイナーtakasyiのシネマアーカイブ。単純に観た映画を覚えとく手段のひとつになるメモ書き程度のテキスト。休みの前の日に、夜中遅くまで映画観るのとかたまらんですよね。

ジャンゴ 繋がれざる者 / DJANGO UNCHAINED

DJANGO UNCHAINED

5

2012年 / アメリカ
監督:クエンティン・タランティーノ
脚本:クエンティン・タランティーノ
出演:ジェイミー・フォックス / クリストフ・ヴァルツ / レオナルド・ディカプリオ / ケリー・ワシントン / サミュエル・L・ジャクソン / ドン・ジョンソン / ジョナ・ヒル / ウォルトン・ゴギンズ / デニス・クリストファー / ローラ・カユーテ / M・C・ゲイニー / クーパー・ハッカビー / ドク・デュハム / ジェームズ・ルッソ / フランコ・ネロ / クエンティン・タランティーノ / ゾーイ・ベル

奴隷制度を扱ったジャンル映画を作りたいという思いを少なくとも10年間は持っていたというタランティーノが、そのアイデアをマカロニ・ウエスタンと見事に融合させた一点の曇もない最高の一本を世界に解き放った。タランティーノがマカロニ・ウエスタンを撮ったという既成事実だけで、もはや彼の『ジャンゴ』は大成功と言えるのかもしれない。

前作『イングロリアス・バスターズ』のナチスに続き、今作も奴隷制度という歴史的背景を大きな要素として物語を構成している。ジャンル映画にこだわり続けている中で、この2作は今後のタランティーノ映画においても重要な作品になりそう。
そうした彼の映画作りに対する意識や考え方などを察すれば察するほど、映画ファンのみならず『ジャンゴ 繋がれざる者』は暴力性と正義感と皮肉が一体となった超痛快最高傑作とも捉えられるんじゃないかとワクワクしてくる。

ムッシュ・キャンディの執事スティーブン役を演じたサミュエル・L・ジャクソン。サミュエルをあんなふうに撮れるのはタランティーノしかいないですね。そしてレオナルド・ディカプリオ。今作でとても楽しみだったポイントのひとつとしては、タランティーノ映画でレオナルド・ディカプリオがどう立ち居振る舞うのか、という部分だったんですが、最高でしたねムッシュ・キャンディ。
初の悪役っていう見せ方になってるけど、悪役というよりは地位も名誉もあって、金がありあまってて、アンダーグラウンドな趣味に走っているフランスかぶれ変態大富豪役でしょうかね。食卓で瞳孔おっ開いて髑髏をカットするシーンなんて恐ろしすぎます。

キング・シュルツがバーでビールを注ぐシーン、ジャンゴたちを襲撃した白人たちが被ってた覆面のクオリティについてのくだり、強く影響を受けているセルジオ・コルブッチ監督「続・荒野の用心棒」のジャンゴ役、フランコ・ネロがカメオ出演していて名前と名前の綴りを聞くシーン、タランティーノがダイナマイトでぶっ飛ぶシーンなどなど、すぐにでもまた観たくなるシーンの連発です。ゾーイ・ベル出てたの気付かなかった...。

ちなみに“ファック”の最多登場映画は281回で『パルプ・フィクション』だそうなんですけど、今作『ジャンゴ 繋がれざる者』では、“ニガー”が1〜2分に1回出てくる計算で137回だそうです。この記録もタランティーノ自ら塗り替えてってほしいもんですね。

ゼロ・ダーク・サーティ / ZERO DARK THIRTY

ZERO DARK THIRTY

5

2012年 / アメリカ
監督:キャスリン・ビグロー
脚本:マーク・ボール
出演:ジェシカ・チャステイン / ジェイソン・クラーク / ジョエル・エドガートン / ジェニファー・イーリー / マーク・ストロング / カイル・チャンドラー / エドガー・ラミレス ラリー / ジェームズ・ガンドルフィーニ / クリス・プラット / フランク・グリロ

『ゼロ・ダーク・サーティ』は、ビンラディンの居場所を突き止めるべく孤軍奮闘するCIAの若き女性情報分析官マヤのプロセスにスポットを当てた事実に基づく作品だけど、監督キャスリン・ビグローと脚本家マーク・ポールが、当事者たちから念入りに取材を重ねて物語を構築したフィクション映画だというのが信じられないし、これらをわずか2年間でこれほどまでのものに仕上げたというのがもっと信じられない。

上映時間は160分。この2時間強の間、観客たちはマヤのビンラディン捜索を追うとともに、ドキュメンタリーなのかフィクションなのかという自問自答を繰り返しながら、どう受け止めればいいのか半ばパニックに陥りそうなまでの行き場のない空間に閉じ込められる。

高校を出てからCIAに入り、ビンラディン捜索にすべてを捧げてきたマヤという一人の女性がどう変わっていくかという劇映画。
初めて尋問に立ち会ったり、相手の罠にはまり仲間を自爆テロで失ったり、自ら爆発テロに巻き込まれたり、一歩家を出れば狙撃されたりする中で、ボロボロになりながらもビンラディンに近づいていく彼女。死体袋を開けて彼の動かぬ姿を見たとき何を思ったのか、これから自分はどこへ向かうのか。それらを問い詰めてきます。

証拠はつかめないものの、ビンラディンの隠れ家だと思われる建物を見つけてから襲撃のGOが出るまで、相当な期間“待機”することになる。マヤは動こうとしない上層部に苛立ちをぶつけ、“何もしないというリスク”だと主張し、会議の席でCIA長官に「お前は誰だ?」と聞かれて「ビンラディンを見つけたクソッタレです。」と言い放つ。このシーンはとても印象的でした。

クライマックスでネイビーシールズがビンラディンの隠れ家を襲撃する一部始終がとにかく素晴らしい。

キャスリン・ビグローはこのシーンの撮影について、スタイリッシュな演出は避け、作りモノに見えないように細心の注意を払い、逆に抑えることでリアルさの美学を表現したと言っているけど、最高潮に達したこの臨場感と緊迫感は、この上ないエンターテイメント性を持ち合わせていた。

ちなみに、この隠れ家も入手した写真を元に、原寸通りに壁のタイルまで忠実に再現して建てたようです。作品全体を通して言えることだけど、彼女の徹底したリアリズムを感じることのできるエピソードです。奇しくもこの襲撃シーンは、ビンラディン殺害から1周年にあたる日に撮影されたという。

この襲撃シーンを観るだけで1,800円払ってもいいです!と言っても言い過ぎじゃない。こんな映像を突きつけられたら、現実との区別がつかなくなっちゃうよ!と軽く怒りすら覚えてくる。これが現場なんだと言わんばかりの淡々とした冷酷さ。スゴイ、怖い、スゴイよ、怖いよこんなの、あんまりだよ。

BIUTIFUL / ビューティフル

BIUTIFUL

5

2010年 / スペイン=メキシコ
監督:アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ
脚本:アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ / アルマンド・ボー / ニコラス・ヒアコボーネ
出演:ハビエル・バルデム / マリセル・アルバレス / エドゥアルド・フェルナンデス / ディアリァトゥ・ダフ / チェン・ツァイシェン / アナー・ボウチャイブ / ギレルモ・エストレヤ / ルオ・チン

舞台はバルセロナ。華やかなイメージの裏には、スペインの大都市が抱える社会問題の中で生きる人々の生活があり、厳しい現実がうごめいている。そんな中で末期がんで余命2ヶ月を宣告されながらも2人の子供と共に生きている父親ウスバル(ハビエル・バルデム)を取り巻くヒューマンドラマとなっている。

『ノーカントリー』で狂ったようにサイコ野郎を演じきったハビエル・バルデムが、アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ監督の元でどんな化学変化を起こすのか!?って部分にすごく興味があったんだけど、とにかく彼の一挙手一投足が素晴らしくて、運命という闇の中でもがき苦しみ生きようとする主役を見事に演じた。この映画に出るために俳優になったんじゃないかと思わせるくらいの演技に胸を打たれました。

ウスバルは非常に責任感の強い男だ。生きる糧として犯罪にも手を染めてはいるものの、ビジネスパートナーとして真剣につき合い、思いやりを持って接することができる男だ。しかし、そういう性格が故に...という一言で片づけてしまっては忍びないくらいの恐ろしい大事故が起きてしまう。

物語として大きなポイントでもあり、そこからラストにかけてそれぞれの“運命”を決定付けるかのような出来事となる。観る者も目を背けたくなるような描写が続くのだが、このときウスバルがバルセロナの夕陽と鳥たちと共に描かれるシーンが訪れる。ここで不思議なことに異常なまでの“美しさ”を感じた。今までのウスバルの生き様、気が滅入る事故の描写を対比してくれと言わんばかりの、とてつもなく遠くに位置するかのような“美しさ”を感じた。

鑑賞後にじっくり振り返れば振り返るほど、ウスバルとサグラダ・ファミリアの遠景とバルセロナの夕陽の印象が増してくる。このへんにアレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥの映像作家としての計り知れない魅力があるのだろう。

アバター / AVATAR

AVATAR

5

2009年 / アメリカ
監督:ジェームズ・キャメロン
脚本:ジェームズ・キャメロン
出演:サム・ワーシントン / ゾーイ・サルダナ / シガーニー・ウィーヴァー / スティーヴン・ラング / ミシェル・ロドリゲス / ジョヴァンニ・リビシ / ジョエル・デヴィッド・ムーア / CCH・パウンダー / ウェス・ステューディ / ラズ・アロンソ

未知のクリーチャーや美しい植物や生物、近未来のテクノロジーなど、幻想美と生命力に満ち溢れた惑星パンドラが舞台となるんですが、AVATARはここに尽きると思います。もうホントにこの惑星が存在するとしか思えないくらい。どっからがCGでどっからが実写か、とかっていう次元じゃない。だってもうそこにいるんだから。みんなでパンドラに疑似宇宙旅行しちゃえばいいんだと思いますよ。

その意味でもIMAXデジタルシアター(巨大なフィルムサイズを採用した映写システム+立体音響)での鑑賞は大きいです。なんなんですかこのド迫力ったら。ポップコーンを握った手を口に運ぶところまで脳が追っつきません。

これまでも何回か“3D映画ブーム”はあったし、最近でも“3D”を売りにした作品も公開されてはいるが、このAVATARは「ジュラシック・パークの恐竜の衝撃」的な、いわゆる映画史に残る“事件”となってるのは明らか。監督自身も言うように、これが衣装やメイクなどと同様に組み込まれるようになるのが当たり前になってくる未来も近いのではないかと。製作もそうだけど、設備の充実の両面から見ても。

「映画好き」というのであれば、その転換点を肌で感じて目撃するべき作品と思います。そして可能な限り IMAXで。それが製作サイドの強く望むところだから。

THIS IS IT

THIS IS IT

5

2009年 / アメリカ
監督:ケニー・オルテガ
出演:マイケル・ジャクソン

最高のエンターテイメントでした。ありがとう、マイケル。