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Webディレクター/デザイナーtakasyiのシネマアーカイブ。単純に観た映画を覚えとく手段のひとつになるメモ書き程度のテキスト。休みの前の日に、夜中遅くまで映画観るのとかたまらんですよね。

サイド・エフェクト / SIDE EFFECTS

R100

4

2013年 / アメリカ
監督:スティーヴン・ソダーバーグ
脚本:スコット・Z・バーンズ
出演:ジュード・ロウ / ルーニー・マーラ / キャサリン・ゼタ=ジョーンズ / チャニング・テイタム / アン・ダウド / ヴィネッサ・ショウ / カルメン・ペラエス / マリン・アイルランド / ポリー・ドレイパー / ジェームズ・マルティネス / メイミー・ガマー / ケイティ・ロウズ / デヴィッド・コスタビル

“型にはまらない映画作家”ソダーバーグが最後の映画としてスクリーンに放ったのは、若くて可憐な美女が引き起こした異様な殺人事件をめぐる心理サスペンス。

ピックアップすべきところは、ソダーバーグ自身も語るようにヒッチコック作品から多くを学び、良いアイデアを取り入れて撮られた“ヒッチコック風サスペンス”という点にあるでしょうか。

鬱病と精神医療、製薬業界と医者の関係などのバックボーンを敷き、美しくもあり魔性的でもある患者エミリー(ルーニー・マーラ)と、それに魅せられていく精神科医バンクス(ジュード・ロウ)が繰り広げる心理ゲームはとても見応えがあり、かつミニマムに仕上がっている。エミリーが夢遊病になり旦那を殺してしまうシーンの緊張感と恐ろしさは、ヒッチコック作品もびっくり、もっと暑い時期に観たかったくらい、背筋が凍るような印象を受けた。

物語において重要な役割となるシーバート博士という人物が出てくるが、これをキャサリン・ゼタ=ジョーンズが演じている。彼女とルーニー・マーラの絡みも必見なわけですが、ともあれルーニー・マーラは『ソーシャル・ネットワーク』『ドラゴン・タトゥーの女』でデヴィット・フィンチャーと仕事を共にし、今作でソダーバーグ。

映画界を代表する2人の監督の作品に出演したことになるけど、『サイド・エフェクト』での彼女の演技は、今後のキャリアにおいてとても重要なポイントとなり得る可能性を感じさせてくれた。スクリーンいっぱいに広がるただならぬ魔性っぷりがハンパないです。

そして、今後はTV作品等の製作に専念すると公言して、実質映画業界から“引退”するスティーヴン・ソダーバーグ。型にはまらない作品を世に送り出し続けて、今回もヒッチコック風に挑んでこれだけのものが撮れることを示したわけですが、それらがもう観れなくなるのかなと思うと、寂しい限りです。

ジャンゴ 繋がれざる者 / DJANGO UNCHAINED

DJANGO UNCHAINED

5

2012年 / アメリカ
監督:クエンティン・タランティーノ
脚本:クエンティン・タランティーノ
出演:ジェイミー・フォックス / クリストフ・ヴァルツ / レオナルド・ディカプリオ / ケリー・ワシントン / サミュエル・L・ジャクソン / ドン・ジョンソン / ジョナ・ヒル / ウォルトン・ゴギンズ / デニス・クリストファー / ローラ・カユーテ / M・C・ゲイニー / クーパー・ハッカビー / ドク・デュハム / ジェームズ・ルッソ / フランコ・ネロ / クエンティン・タランティーノ / ゾーイ・ベル

奴隷制度を扱ったジャンル映画を作りたいという思いを少なくとも10年間は持っていたというタランティーノが、そのアイデアをマカロニ・ウエスタンと見事に融合させた一点の曇もない最高の一本を世界に解き放った。タランティーノがマカロニ・ウエスタンを撮ったという既成事実だけで、もはや彼の『ジャンゴ』は大成功と言えるのかもしれない。

前作『イングロリアス・バスターズ』のナチスに続き、今作も奴隷制度という歴史的背景を大きな要素として物語を構成している。ジャンル映画にこだわり続けている中で、この2作は今後のタランティーノ映画においても重要な作品になりそう。
そうした彼の映画作りに対する意識や考え方などを察すれば察するほど、映画ファンのみならず『ジャンゴ 繋がれざる者』は暴力性と正義感と皮肉が一体となった超痛快最高傑作とも捉えられるんじゃないかとワクワクしてくる。

ムッシュ・キャンディの執事スティーブン役を演じたサミュエル・L・ジャクソン。サミュエルをあんなふうに撮れるのはタランティーノしかいないですね。そしてレオナルド・ディカプリオ。今作でとても楽しみだったポイントのひとつとしては、タランティーノ映画でレオナルド・ディカプリオがどう立ち居振る舞うのか、という部分だったんですが、最高でしたねムッシュ・キャンディ。
初の悪役っていう見せ方になってるけど、悪役というよりは地位も名誉もあって、金がありあまってて、アンダーグラウンドな趣味に走っているフランスかぶれ変態大富豪役でしょうかね。食卓で瞳孔おっ開いて髑髏をカットするシーンなんて恐ろしすぎます。

キング・シュルツがバーでビールを注ぐシーン、ジャンゴたちを襲撃した白人たちが被ってた覆面のクオリティについてのくだり、強く影響を受けているセルジオ・コルブッチ監督「続・荒野の用心棒」のジャンゴ役、フランコ・ネロがカメオ出演していて名前と名前の綴りを聞くシーン、タランティーノがダイナマイトでぶっ飛ぶシーンなどなど、すぐにでもまた観たくなるシーンの連発です。ゾーイ・ベル出てたの気付かなかった...。

ちなみに“ファック”の最多登場映画は281回で『パルプ・フィクション』だそうなんですけど、今作『ジャンゴ 繋がれざる者』では、“ニガー”が1〜2分に1回出てくる計算で137回だそうです。この記録もタランティーノ自ら塗り替えてってほしいもんですね。

ゼロ・ダーク・サーティ / ZERO DARK THIRTY

ZERO DARK THIRTY

5

2012年 / アメリカ
監督:キャスリン・ビグロー
脚本:マーク・ボール
出演:ジェシカ・チャステイン / ジェイソン・クラーク / ジョエル・エドガートン / ジェニファー・イーリー / マーク・ストロング / カイル・チャンドラー / エドガー・ラミレス ラリー / ジェームズ・ガンドルフィーニ / クリス・プラット / フランク・グリロ

『ゼロ・ダーク・サーティ』は、ビンラディンの居場所を突き止めるべく孤軍奮闘するCIAの若き女性情報分析官マヤのプロセスにスポットを当てた事実に基づく作品だけど、監督キャスリン・ビグローと脚本家マーク・ポールが、当事者たちから念入りに取材を重ねて物語を構築したフィクション映画だというのが信じられないし、これらをわずか2年間でこれほどまでのものに仕上げたというのがもっと信じられない。

上映時間は160分。この2時間強の間、観客たちはマヤのビンラディン捜索を追うとともに、ドキュメンタリーなのかフィクションなのかという自問自答を繰り返しながら、どう受け止めればいいのか半ばパニックに陥りそうなまでの行き場のない空間に閉じ込められる。

高校を出てからCIAに入り、ビンラディン捜索にすべてを捧げてきたマヤという一人の女性がどう変わっていくかという劇映画。
初めて尋問に立ち会ったり、相手の罠にはまり仲間を自爆テロで失ったり、自ら爆発テロに巻き込まれたり、一歩家を出れば狙撃されたりする中で、ボロボロになりながらもビンラディンに近づいていく彼女。死体袋を開けて彼の動かぬ姿を見たとき何を思ったのか、これから自分はどこへ向かうのか。それらを問い詰めてきます。

証拠はつかめないものの、ビンラディンの隠れ家だと思われる建物を見つけてから襲撃のGOが出るまで、相当な期間“待機”することになる。マヤは動こうとしない上層部に苛立ちをぶつけ、“何もしないというリスク”だと主張し、会議の席でCIA長官に「お前は誰だ?」と聞かれて「ビンラディンを見つけたクソッタレです。」と言い放つ。このシーンはとても印象的でした。

クライマックスでネイビーシールズがビンラディンの隠れ家を襲撃する一部始終がとにかく素晴らしい。

キャスリン・ビグローはこのシーンの撮影について、スタイリッシュな演出は避け、作りモノに見えないように細心の注意を払い、逆に抑えることでリアルさの美学を表現したと言っているけど、最高潮に達したこの臨場感と緊迫感は、この上ないエンターテイメント性を持ち合わせていた。

ちなみに、この隠れ家も入手した写真を元に、原寸通りに壁のタイルまで忠実に再現して建てたようです。作品全体を通して言えることだけど、彼女の徹底したリアリズムを感じることのできるエピソードです。奇しくもこの襲撃シーンは、ビンラディン殺害から1周年にあたる日に撮影されたという。

この襲撃シーンを観るだけで1,800円払ってもいいです!と言っても言い過ぎじゃない。こんな映像を突きつけられたら、現実との区別がつかなくなっちゃうよ!と軽く怒りすら覚えてくる。これが現場なんだと言わんばかりの淡々とした冷酷さ。スゴイ、怖い、スゴイよ、怖いよこんなの、あんまりだよ。

ザ・グレイ 凍える太陽 / THE GREY

THE GREY

4

2012年 / アメリカ
監督:ジョー・カーナハン
脚本:ジョー・カーナハン / イーアン・マッケンジー・ジェファーズ
出演:リーアム・ニーソン / フランク・グリロ / ダーモット・マローニー / ダラス・ロバーツ / ジョー・アンダーソン / ノンソー・アノジー / ジェームズ・バッジ・デール / ベン・ブレイ / アン・オープンショー

極寒アラスカで飛行機事故。生き残った7人のサバイバルから何が見えてくるのか。
大きなポイントとしてはリーアム兄さんが無敵ではないこと。次々に振りかかる困難にビクビクしている。こういうリーアム兄さんも良いかなーって思います。

ディアスの死をどう捉えるかによって作品全体としての興味深さがだいぶ違ってくる。ちょっと面白かったのは、似たような映画「生きてこそ」について軽く触れてたこと。狼アップ時のハリボテ感は否めないけど、製作総指揮トニー・スコットの良作と思います。

「もう一度戦って、最強の敵を倒せたら、その日死んでも悔いはない。その日死んでも悔いはない。」

サニー 永遠の仲間たち / SUNNY

SUNNY

4

2011年 / 韓国
監督:カン・ヒョンチョル
脚本:カン・ヒョンチョル
出演:ユ・ホジョン / シム・ウンギョン / チン・ヒギョン / カン・ソラ / コ・スヒ / キム・ミニョン / ホン・ジニ / パク・チンジュ / イ・ヨンギョン / ナム・ボラ / キム・ソンギョン / キム・ボミ / ミン・ヒョリン

韓国とはいえ、どことなくノスタルジックさも感じて、涙腺をちょいちょい刺激されつつ、学生時代の友達に「元気にしてる?」と連絡したくなるステキガーリームービー。現在と高校時代の切り替わりもシームレスでテンポが良い。

ハ・チュナから渡されたビデオを観ているイム・ナミ越しのTVモニターのシーンが忘れられないです。エンドロールもいいね!