世界中で愛されてやまないモーリス・センダックの名作怪物絵本『かいじゅうたちのいるところ(WHERE THE WILD THINGS ARE)』をスパイク・ジョーンズが実写映画化っ!ということで、いつものことながらいてもたってもいられなかったわけなんですが、それはもう不思議ないい映画とでも言うか、アーティスティックなセンス溢れる独自の世界観で楽しませてもらいました。
人間関係の難しさを描いている
これは、8つや9つの子どもであること、そして、自分を取り巻く世界や人々、さらには時として予測できなかったり、ワケが分からなかったりする感情を理解しようとすることを描いたストーリーなんだ。
via: スパイク・ジョーンズ
つまり、人生を通して直面するさまざまな人間関係の難しさを描いているということなんだよ。
50年近く前から愛されている絵本の映画化とは言え、それは決して子供向きというわけでもない。むしろ吹き替え版でちっちゃい子が観たとして、“着ぐるみ”や“世界観”のビジュアル以外で楽しめてるのか?という疑問すら抱くほど、人間たちがいる世界同様に、かいじゅうたちの世界もデリケートでいろいろな感情がひしめき合っている。スパイク・ジョーンズが「人間関係の難しさを描いている」と語っているように、見せる表情も繊細かつ多彩だ。
とは言っても少年とかいじゅうたちがやってることは思いっきりダッシュしたり、ジャンプしたり、秘密の基地へ連れて行ったり、泥だんごを投げ合ったりで、一般的に見る“子ども”の遊びだ。
しかし、崖まで走りきったあとの夕陽、泥だんご合戦でアレキサンダーが2回だんごをぶつけられるくだり、マックスの雪合戦が伏線となりキャロルが同じことをリピートするくだりなどなど、そんな子どもの遊びを経て大人になった世代でも思わずグッとくるシーンが多々用意されている。それを大いに感じたのはやっぱりあのラストシーンかなー。
原作への変わらない愛情とリスペクト
あの本は、子どもたちの純粋な気持ちにすーっと入り込み、おもねることなく、その気持ちを真剣に受け止めるからじゃないかな。今の子どもたちは、あまりにも純粋でない物理的なものに囲まれて生きているので、こういうストーリーに出会うと心から惹かれるんだよ。僕も子どものころ、ほかの子たちが自分と同じ経験をし、同じような思いを抱いているってことを知りたくてたまらなかったのを覚えてる。
via: スパイク・ジョーンズ
スパイク・ジョーンズが原作をリスペクトし、愛情を注いで丁寧に作り上げてるなーと一番感じたのは“かいじゅうたち”の着ぐるみ。変な話、着ぐるみを着た人の演技でここまで心動かされるとは思わなかった。
中途半端に生物に寄せるわけでもなく、それでいて思わず胸に突き刺さるような表情を見せつけた“かいじゅうたち”の仕上がりっぷりったらない。
そうじゃなくても周りでは巧みなアニメーションやCG、3Dなどの技術をふんだんに駆使した作品がどんどん出てきてる中、言ってしまえばノッポさんビックリ、ゴン太くんみたいな着ぐるみでこの完成度。スパイク・ジョーンズすげぇー。
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