スティーヴン・ソダーバーグ最後の劇場映画といわれる『サイド・エフェクト』をTOHOシネマズ川崎で鑑賞してきました。
良質な“ミニマリズム”サスペンス
ヒッチコックの映画がいま観てもとても面白いのは、彼の映画がすべて罪の意識を描いているからだと思う。それは普遍的なテーマだ。それを今回、医者と患者の関係において描くのは、とても豊かな映画的素材になると思ったんだ。
via: スティーヴン・ソダーバーグ
“型にはまらない映像作家”ソダーバーグが最後の映画としてスクリーンに放ったのは、若くて可憐な美女が引き起こした異様な殺人事件をめぐる心理サスペンス。
ピックアップすべきところは、ソダーバーグ自身も語るようにヒッチコック作品から多くを学び、良いアイデアを取り入れて撮られた“ヒッチコック風サスペンス”という点にあるでしょうか。
鬱病と精神医療、製薬業界と医者の関係などのバックボーンを敷き、美しくもあり魔性的でもある患者エミリー(ルーニー・マーラ)と、それに魅せられていく精神科医バンクス(ジュード・ロウ)が繰り広げる心理ゲームはとても見応えがあり、かつミニマムに仕上がっている。エミリーが夢遊病になり旦那を殺してしまうシーンの緊張感と恐ろしさは、ヒッチコック作品もびっくり、もっと暑い時期に観たかったくらい、背筋が凍るような印象を受けた。
物語において重要な役割となるシーバート博士という人物が出てくるが、これをキャサリン・ゼタ=ジョーンズが演じている。彼女とルーニー・マーラの絡みも必見なわけですが、ともあれルーニー・マーラは『ソーシャル・ネットワーク』『ドラゴン・タトゥーの女』でデヴィット・フィンチャーと仕事を共にし、今作でソダーバーグ。
映画界を代表する2人の監督の作品に出演したことになるけど、『サイド・エフェクト』での彼女の演技は、今後のキャリアにおいてとても重要なポイントとなり得る可能性を感じさせてくれた。スクリーンいっぱいに広がるただならぬ魔性っぷりがハンパないです。
そして、今後はTV作品等の製作に専念すると公言して、実質映画業界から“引退”するスティーヴン・ソダーバーグ。型にはまらない作品を世に送り出し続けて、今回もヒッチコック風に挑んでこれだけのものが撮れることを示したわけですが、それらがもう観れなくなるのかなと思うと、寂しい限りです。
サイド・エフェクト! (@ TOHOシネマズ 川崎 w/ 2 others) http://t.co/tuKFQ93rPD
— takasyi | roughtab (@takasyi) September 7, 2013
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