11日から公開の松本人志第3回監督作品『さや侍』をさっそく観てきました。
かっこ悪いことを徹底的にやることは、かっこいいことなんだ
見終わった直後の感想として一言挙げるなら、“心から愛を感じる映画”でした。変化が激しい松本人志監督の作品では一番“わかりやすい”映画とも言えるだろうと思う。
「笑い」は「哀しさ」と表裏一体という部分を、笑いを取れなかったら腹を切らなきゃいけない「三十日の業」というものに位置付け、クライマックスでは自身の環境の変化からくる想いを感動的な手紙にして詠み上げた。主演の素人のおっさん野見隆明が直前で見せた迫真の演技で大きな振り幅があった分、より直接的に訴えかけられた印象です。
テレビ番組などでは結婚や長女についての話を芸人松本人志として笑いに変えたりするのをよく見るので、なかなか「本当のところはどんなふうに思ってるのか」という部分が煙に巻かれるけど、この作品では監督松本人志としてスクリーンを通してしっかりとしたメッセージが届けられた。
野見隆明という男 - Takaaki Nomi
あの人は誰でもできることができなくて、誰もできないことができる人なんですよね。あと、サービス精神かな。そこは唯一、僕と共通してるところかと(笑)。
via: 松本人志
と言いながら、いまだに腹割ってしゃべったこともないし、本当のところはよくわからないんですけど。まぁ不思議な人ですよね。
この野見隆明という男は、2002年10月にスタートしたフジテレビ「働くおっさん人形」で登場した素人のおっさんである。続編となる「働くおっさん劇場」でも強烈な笑いとインパクトを与え、笑いを追求し続ける松本人志が「世界で一番面白いヤツって、世界で一番面白くないヤツなんじゃないか」と話したことはとても印象的だった。
自らは初めて監督業に徹した3作品目の映画の主演に、この“世界で一番面白いヤツって、世界で一番面白くないヤツ”が決まったのを知ったときから、ずっとわくわく感が抑えきれなかった。
先入観、もしくはそこを裏切りたいという想いが少しあるのか、不思議なものでオープニングで“さや”をしっかり持って森を駆ける野見隆明は、紛れもなく野見勘十郎を演じている俳優としての野見隆明に映っていて、背筋がゾクゾクッとした。
そんな印象を与えた冒頭のシーンでも野見隆明本人は「ただその場で走ってと言われたから」というのだけで演じたという。そんな舞台裏の話も入ってくると、ビジュアルイメージが高い意識の部分で合致したかのような、いかにあの映像がスゴイということがわかる。
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