高度資本主義社会における人類の繁栄を裏側から逆照射した黙示録的な傑作『GOMORRA』をシアター・イメージフォーラムにて鑑賞してきました。
GOMORRAにおける“現場”は“現代”なのか
私はできる限り包み隠さず、あたかも現場を通りがかって見かけたかのように、それらを撮影したのです。
via: マッテオ・ガッローネ (オリジナル・プレス)
「GOMORRA(ゴモラ)」とは、旧約聖書のエピソードで神の怒りに触れて焼かれた商業都市の名前だ。
日焼けサロンでくつろいでる強面の大男たちが次々に殺される。まさに“焼かれた”という表現がピッタリ当てはまりそうな惨殺シーンから映画は始まる。闇と日焼けマシーンの青白い照明のコントラストも印象的で、タイトルにふさわしいオープニングと言えようか、と思うと同時に、これからただ事じゃない何かを見せつけられるという一種の絶望感もグッと立ちこめる。
ナポリを拠点とするイタリア最古かつ最大の都市型暴力・犯罪組織集団“カモッラ”。そのカモッラと関わっている人々の日常や生活を、冷酷なまでにただただ淡々と描くドキュメンタリータッチな群像劇。監督自らも偶然見かけたかのように撮りたかったと話す意図が突き刺さる。紛れもなく"現場"にいるかのような恐ろしさに包まれた2時間15分となった。
そういう形態があるのみで、誰を責めるわけでもなく、誰が悪いわけでもない。観る側として感情移入出来そうなのは"カモッラ"から抜け出したいと行動する人々になりそうだけど、特別にそこにウエイトを置いてるわけでもなく、言ったら平等に表現されている。
“個”などはいっさい存在しなく、とてつもなく巨大で形のはっきりしない裏の“組織”であり“産業”であり“社会"であり“現代”を、まざまざと見せつけられて何を想えばいいのか。知ることに意義があるのか。
演出としてはノンフィクションにすごく寄っていて、“真実に限りなく近いもの”こそ怖くて伝わるものも多い。回り回って自分の身近なところにまですでに忍び寄ってると感じざるを得ない。重量感たっぷりの映画でした。
原作は2006年に出版後、イタリア国内で100万部のベストセラーとなり、世界40ヶ国以上で翻訳された「死都ゴモラ」で、著者のロベルト・サヴィアーノは今も命を狙われ、警察の保護下に置かれているという。
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