80歳で生まれて若返っていく数奇な人生を生きたある男の物語『ベンジャミン・バトン 数奇な人生』をユナイテッド・シネマとしまえんのレイトショーで鑑賞。見事なまでの仕上がりをみせた3時間近くのおとぎ話に浸ってきました。
ベンジャミンはビリヤードの突き球みたいなもの。そして、彼が遭遇する人々すべてが彼に何らかの痕跡を残していく。
それが人生というものなんだよ。他の人や出来事に遭遇することでできる"へこみ"や引っ搔き傷の集合体が人生なんだ。それによって、他の何者でもないベンジャミンという男ができあがった。
via: デヴィッド・フィンチャー
「普通じゃない」ことが普通じゃなさ過ぎる
生まれたときに見た目が80歳。老女に「あたしの旦那にそっくり」と言われる0歳。周りの老人たちはどんどん天に去って行くが、背筋もピンとしてきて体毛も豊かになっていく。そんな普通じゃなさ過ぎる普通じゃない人生の立ち上がり。世界中でただ自分一人だけが違うベクトルに歳を重ねるベンジャミン。
物語が進むにつれ「歳をとる=若返る」というベンジャミンサイドの視点と、「歳をとる=老いる」というベンジャミン以外の人たちの視点が交差して、果たして「80歳で生まれて0歳で死ぬ」のは幸せなことなのかとか考えて妙な感覚になったけど、結局同じ分だけ時間は経ていくわけで、みんな「歳をとる」のには変わりはない。
ブラッド・ピットとケイト・ブランシェット
特殊技術のメイクやCGも駆使されてはいるものの、人生のほとんどのシーンでどちらも登場してきて、特に「若返る」というそれこそ普通じゃなさ過ぎる無茶振りな設定の中、ベンジャミンの人生を演じきったブラッド・ピットはお見事の一言。特殊メイクにも負けてません。一瞬、リバー・ランズ・スルー・イットの頃のブラピみたい!とか思ったりもして懐かしかったですが。
そんなベンジャミンの人生に深く関わりを持ち、いろんな心境の変化が難しかったであろうデイジーを演じたケイト・ブランシェットもまた美しくて素晴らしかったんじゃないかと思います。
前作『ゾディアック』からの流れ
セブン、ゲーム、ファイト・クラブなどなど、大好きなフィンチャーの作品から一転したと言っても過言じゃない前作の『ゾディアック』では実際に起こった話を元に、物語として伝えることに専念。この『ベンジャミン・バトン』もそういう意味では愛とか死とか人生とかっていう普遍的なテーマを忠実に、かつ数奇に描ききったなーっていうのがなんだかもやもやっとしながら見終えた直後の印象。それでもラストの病室からカメラが引いていくシーンからエンドロールにかけてはフィンチャーのそれを感じました。
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