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木曜Foot! イトゥラルデ・ゴンサーレス インタビュー第1弾

木曜Foot! イトゥラルデ・ゴンサーレス インタビュー第1弾

1月3日の木曜Foot!で特集されたスペイン・バスク自治州出身の元サッカー審判員で、現在はアギネギン製義歯所で歯科技工士として働くイトゥラルデ・ゴンサーレスのインタビューが興味深い内容だったので書き起こしました。

木曜Foot! イトゥラルデ・ゴンサーレス インタビュー第1弾 2

──お友達には何と呼ばれていますか?

イトゥラルデ・ゴンサーレス
イトゥ

──イトゥと呼んでも構いませんか?

イトゥラルデ・ゴンサーレス
もちろん!いいよ!

──今は何をしていますか?

イトゥラルデ・ゴンサーレス
歯科技工士として働いています。あとは家族と一緒に過ごしていますね。
プリメーラのレフェリーを17年間努め、毎年180日家を空けていましたから、今はのんびりしたいんです。

──レフェリーを辞めて半年が経ちます。ピッチは恋しいですか?

イトゥラルデ・ゴンサーレス
恋しいのはピッチよりも試合が行われる場所への遠征ですね。
17年間いつも責任を追い続けたので本当に疲れました。でも、また旅をして多くの人に出会いたいですね。恋しいのはそれだけです。

──なぜレフェリーになろうと思ったのですか?

イトゥラルデ・ゴンサーレス
祖父も父もレフェリーでした。82年にスペインでW杯が開催されました。そのときW杯が大きく報道され自分も挑戦してみようと思ったのです。若い頃は選手もしていましたが、20歳のとき選択を迫られレフェリーを選びました。

──レフェリーは観客に罵声を浴びせられ、指笛を吹かれ、ときには脅されることさえもあります。しかし、いいレフェリングをしても褒められません。頑張って仕事をする価値はありますか?

イトゥラルデ・ゴンサーレス
もちろんやりがいはあります。私が担当したのはプリメーラの試合だけではありません。
最初にレフェリーを務めたのは14歳のときでした。その年齢で私は決断を下す責任を追い始めたのです。脅されることも、指笛を吹かれることも気にならなくなりました。慣れていない人は、とてもそうはいかないかもしれませんね。全ての仕事には裏と表があるのです。陰と陽のようにね。
フットボールは私を大いに満たしてくれました。多くの国を訪れ、多くの文化を体験できました。それらの機会は全てフットボールが私に与えてくれたのです。日本にも2度行きました。キリンカップのときです。スーツケースに荷物を詰めて15日間も日本で過ごせたことは、私にとって素晴らしい体験でした。

木曜Foot! イトゥラルデ・ゴンサーレス インタビュー第1弾 3

──メディアの話をさせてください。メディアはレフェリーを容赦なく非難します。時としてやり過ぎだと思うこともあります。それについてはどう思いますか?

イトゥラルデ・ゴンサーレス
プリメーラのレフェリーにとって一番大事なことは、どっしりと構えることです。
この国のメディアは好き嫌いがハッキリしています。彼らには彼らの見方があり、悪者は常にレフェリーになるのです。どちらかが負けたら弱者であるレフェリーを非難します。
しかし、私は気にしませんでした。協会のバックアップがありましたからね。協会に守られているので、批判に対して傷つくことはありません。スペイン記者の多くはフーリガンなんです。そういった事情がわかっていないと腹も立つでしょうね。彼らは記者である前に、どこかのチームのファンなので客観視しません。そんな非難は道端で文句を言われることと同じです。気になりませんし、どうでもいいことです。

──しかし、あなたはメディアに批判されても隠れませんでしたね。

イトゥラルデ・ゴンサーレス
常に反論してきましたよ。火に油を注ぐばかりでしたけどね。私にも言い分はあるので全力で弁護しました。
この国のメディアにあるのは、“スポーツ文化”ではなく“偏見”です。メディアはシナリオ通りにいかないとき、“情報”ではなく“利益”を優先させます。誰かを非難することで彼らは利益を得るのです。当然この国のメディアは大企業ですから、お金を稼がなければなりません。それはつまり好き勝手に言うことなんです。私は常々そう主張してきたので叩かれてばかりでした。しかし、メディアに借りなんてありませんからね。私は何を言っても毎晩ぐっすり眠っていましたよ。
あいつらは“マスメディア”ではなく、“クソメディア”なんです。そう言ってやりましたよ。14歳から責任を持って決断を下してきましたから、思っていることを言うぐらい怖くも何ともありません。

木曜Foot! イトゥラルデ・ゴンサーレス インタビュー第1弾 4

──インタビュアーあたたはクラシコで3回笛を吹きましたが、バルサ対マドリーはレフェリーにとって一番難しい試合ですか?

イトゥラルデ・ゴンサーレス
いえ、メデイアの注目度は高いですが、レフェリーにとっては一番やりやすい試合です。
バルサ対マドリーをよく見てください。選手が巧いからオフサイドはほとんどありません。ファウルもほとんどありませんし、あっても明白なものばかりです。ただ、メディアの取り上げ方が普通ではありません。どちらかにPKを与えたり、誰かを退場させたりしたら大変なことになりますよ。国の半分はマドリーファンとバルサファンですからね。メディアの扱いが違うだけです。
裁くのが一番難しいのは降格や残留を決める試合です。選手はピリピリしていますからね。生活がかかっているので、緊張感が違います。
バルサのボールを廻すスピードは本当に素晴らしいですよ。TVで観るとわかりませんが、ピッチの上では驚異的です。試合後バルで『なんで止めなかったんだ』と言われた時、『あんな速いのをどうやって止めるんだい?』と言い返したことがあります。速すぎて止めるのは無理です。ピッチでは本当に凄いです。

──メッシはあなたがピッチ上で目にした最高の選手ですか?

イトゥラルデ・ゴンサーレス
確かにメッシは本当に巧いです。しかし、イニエスタも同じくらい巧いですね。
メッシほどゴールは決めませんが、イニエスタとチャビは同じレベルです。メッシやC.ロナウドはスターです。メディアが好んで取り上げるので、世界最高と言われます。
しかし、もしメッシがビルバオにいたら今ほど活躍していないかもしれませんよね?メッシが東京ヴェルディの選手だとしても、バルサのメッシと同じくらい活躍するでしょうか?問題はそこなんです。

木曜Foot! イトゥラルデ・ゴンサーレス インタビュー第1弾 5

──メッシについて走るのは無理ですか?

イトゥラルデ・ゴンサーレス
いいえ、C.ロナウドの方が大変ですね。ただし、レフェリーにとってはマドリーのほうがバルサの試合よりも裁くのは楽です。
ボードで説明しますね。☓印が相手チームで○印がバルサだとします。バルサが攻めるとき、相手は深い位置で守ります。もしバルサ相手に守備のラインを高く設定すると三角形を作って簡単に裏のスペースを突かれてしまいます。多くの人数が最終ラインに張り付く相手に対し、バルサはボールを左右に振りながらトライアングルで崩すタイミングをうかがっています。ディフェンスラインの近くでトライアングルが形成されれば、速いパス回しで裏を狙ってくるのです。そのときレフェリーがいる場所は後ろのほうになります。ですからPKになるファウルがあっても遠くにいるためよく見えません。相手は全員で守り、バルサはピッチを横いっぱいに使ってパスを繋ぐので仕方ありません。レフェリーはボールのスピードにはついていけませんからね。
一方のマドリーはもっと直線的です。マドリーはバルサのようにボールを横に繋ぎません。攻撃を仕掛けるときは常にまっすぐです。つまりカウンターです。ですからファウルがあっても、ボールを持っている選手についていけば、近くでハッキリと見えます。サイドからクロスが上がっても、近くでジャッジをすることができるのです。しかしバルサの場合は遠くに追いやられますから、レフェリーにとってはマドリーの試合の方が楽なのです。

──つまり走らされるのはバルサではなくマドリーですか?

イトゥラルデ・ゴンサーレス
かなり違いますね。私が担当した試合なんですが、マドリーが87分にカウンターを仕掛けました。ビジャレアルがコーナーキックを蹴り、マドリーがクリアをして、そこからカウンターが始まりました。そして自陣ゴール前から相手ゴール前まで8秒でゴールが決まりました。私は87分にピッチの端から端まで8秒で走りました。とても大変でしたね。
一方のバルサはそこまで速いカウンターは仕掛けません。もっとパスを繋ぎます。ですから走ることに関しては楽です。ジャッジをするのが難しいのはバルサ、長い距離を走るのはマドリーです。バルサのときはそれほど走りません。なぜなら常に足元にボールがありますからね。

2013.01.03 [Thu] 放送 / インタビュアー:菅原慎吾

木曜Foot! イトゥラルデ・ゴンサーレス インタビュー第2弾

category

Football

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